ニュース

”レーザー光と電子ビーム” ー北大と日立の研究グループー 同時照射実験に成功(2013.3.1 科学新聞掲載)

赤枠に囲まれた部分が掲載内容です。

以下記事内容

「”レーザー光と電子ビーム” ー北大と日立の研究グループー 同時照射実験に成功」2013.3.1 科学新聞掲載

材料内に発生するボイド(原子の空孔の集合体)は、スエリングという材料の膨れ現象や、機械的強度の変化をもたらすだけに、ボイドの発生を如何に抑制するか、その解決策が求められている。北海道大学 大学院工学研究員の渡辺精一教授および日立製作所の研究グループは、同大のレーザー超高圧電子顕微鏡を用い、レーザー光と電子線を同時に照射し、空孔ボイド形成を抑制、制御することに世界で初めて成功した。

開発にあたり、レーザー光をできるだけ減衰なく鏡体内に通すこと、X線を遮蔽すること、鏡内の高真空を保つことの3つの点をクリアさせなければならない。

渡辺教授によると「このため石英ガラスの外側に鉛ガラスを用いることでこの3点をクリアできる導入ポートを作製しました。また、ポートからのX線漏洩をできるだけ抑えるためにポートにφ6ミリメートルの鉛スリットを設置しました」という。さらに、実際に試料にレーザーが照射されているかを目視で確認することができないため、別途、光センサーホルダーを作製し、試料位置中心にレーザー光が届いているかを判断した。

その結果、空孔の形成過程を調べている中で、ステンレス材料に1〜10ナノメートルサイズのボイドが電子線照射やパルスレーザー照射によって形成されることを突き止めた。その際、ナノボイド形成過程を独自に開発したレーザー超高圧電子顕微鏡(130万ボルト)を用いて、レーザーを照射しながら同時に観察実験をしたところ、ボイド形成は、導入された空孔が次第に集まって自己集合化によりレーザー照射下で起こっている現象であることが分かった。

また、電子線照射とレーザー照射を単独で照射する以外に、レーザー照射を行ってから電子線を照射したり、双方を同時に照射する実験を繰り返し、理論計算とも比較した結果、初めてボイド形成の制御メカニズムを解明でき、同時照射の方が電子線照射単独よりもボイド形成が抑制される効果があることが明らかとなった。

渡辺教授は「レーザー超高圧電子顕微鏡の開発の成功により、電子線とレーザー光のビーム同士の相互作用や同時照射効果など、将来、新たな量子ビーム科学の創生が期待できます。現在、進めてきたマルチビーム超高圧電子顕微鏡開発においても、レーザー(フォトン)という新たな量子ビームの導入に成功したことは意義があり、イオンー電子の同時照射マルチビーム超高圧電子顕微鏡に加えて、レーザー光を組み込むという新展開への道が拓かれる点も期待できるでしょう」としている。