2012年10月5日

【研究紹介】アンテナ信号処理技術を用いた無線通信システムの高度化 ~チャネル予測による下り回線マルチユーザMIMOシステムの特性改善~

研究紹介 — 5:33 PM

大学院情報科学研究科
メディアネットワーク専攻・教授 小川 恭孝

 

 

(1)研究者のアピールポイント

本研究者は,アンテナ信号処理技術の我が国におけるパイオニアである.本研究者は1980年代初めに,この技術の移動通信への応用に関する研究を開始し, PHSの空間分割多元接続の商用化に貢献した.

 

(2)本発表研究の概要

基地局が複数のユーザ端末と同時に通信を行うマルチユーザMIMOシステムは,動的フェージング環境の場合,ユーザ間干渉とストリーム間干渉が残留し,特性の劣化が生ずる.本発表では,下り回線信号送信時刻のチャネルを予測することにより,特性改善が可能となることをチャネルの測定結果を基に明らかにする.

 

(3)本研究発表の詳細

送受信機双方に複数のアンテナを設置するMIMO (Multiple-Input Multiple-Output) システムは,チャネル利用効率を向上させることが可能である.図に示したように基地局が複数のユーザ端末と同時に通信を行うマルチユーザMIMOシステムも鋭意検討されている.しかし,下り回線マルチユーザMIMOシステムにおいては,ユーザ間干渉とストリーム間干渉が重大な特性劣化を引き起こすことになる.これらの干渉を除き,伝送速度を向上するため,ブロック対角化法と固有ベクトルビーム空間分割多重伝送が用いられる.これを実現するためには,基地局において下り回線チャネル情報が必要となる.実際の下り回線信号送信時刻はチャネル推定時刻よりも遅れているため,動的フェージング環境では,その間の遅延によりチャネルの変動がおきることになる.その結果,ユーザ間干渉とストリーム間干渉が残留し,特性の劣化が生ずる.本発表では,推定されたチャネルを用いて,実際の下り回線信号送信時刻のチャネルを予測することにより,下り回線マルチユーザMIMOシステムの特性改善が可能となることを,チャネルの測定結果を基に明らかにする.

 

(4)本発表の注目点

通信に信号処理技術は広く使われているが,これまでは主に,時間領域と周波数領域に関するものであった.本研究者が検討している,複数のアンテナによる空間領域信号処理はチャネルの利用効率を著しく改善する.

北海道大学 工学系連携推進部 renkei@eng.hokudai.ac.jp