2012年9月24日

【研究紹介】原子スケールのスピン計測 ~原子スケールの電子スピン状態の計測と制御に向けて~

未分類 — 4:53 PM

(1) 研究者のアピールポイント

走査型プローブ顕微鏡と電子顕微鏡の応用を中心に,原子スケールでのスピン状態の計測制御に向けた新技術開発と,MEMS技術やカーボンナノチューブFET等を応用した各種センサーの研究開発を進めています.

(2) 本発表研究の概要

これまで開発を進めてきたスピン状態の検出可能な走査型プローブ顕微鏡であるスピン偏極STMと交換相互作用力顕微鏡,ならびに周辺関連技術について紹介し,最近の研究成果および研究動向と将来展望について紹介します.

(3) 本研究発表の詳細

走査型トンネル顕微鏡(STM)技術に端を発する走査プローブ顕微鏡(SPM)を用いて試料表面の電子スピン状態を計測する試みが始められてから20年あまりが経過したが,まだ確立した計測技術とまではなっていない.スピン偏極STMでは,原子分解能で電子状態のスピンの偏りを可視できることが様々な系で示されてきた.我々もいくつかの系での研究を進めてきており,最近ではマグネタイトに着目した研究を行っている.STMは導電性の試料の観察を対象とするが,興味のある磁性材料,特に酸化物材料は絶縁性の場合が多い.また,分子におけるスピン状態の計測でも電流が流れることが期待できない場合が多い.そこで,SPMのひとつである原子間力顕微鏡を応用した交換相互作用力顕微鏡(MxFM)を提案し,絶縁性の試料表面でのスピン計測を実現するための研究を進めてきた.探針先端原子と試料表面原子との間に働く交換相互作用力の計測を目指すものである.これまでにNiO(001)表面で予備実験をすすめ,これが可能であることを示した.現在,より広範な試料や分子での交換相互作用力の測定を目指して,新しいMxFM装置の開発を進めている.

(4) 本発表の注目点
本発表で紹介する交換相互作用力顕微鏡は我々が提案し世界に先駆けて実験的検証をおこなったもので,現在,次のステップへ向けて新しい計測システムの開発を進めています.

2012年9月12日

【研究紹介】ラフな計算とその応用 ~粒状性の可能性~

研究紹介 — 10:11 AM

大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻・准教授 村井 哲也

 

(1)研究者のアピールポイント

数学の基礎理論,特に,論理,束論,位相などを踏まえながら,情報の粒状性(ラフ集合)や感性工学(画像,音楽,怪しい論理など)への応用を企んでいること.応用でも,集合論の重要さを理解できてない人が多すぎることが残念に思っている研究者.

(2)本発表研究の概要

ラフ集合の理論を使った粒状性の定式化とその応用の可能性について説明する.特に重要なのは粒度をコンテクストにあわせていかに調整するかであり,その問題はまだ十分研究されているとはいいがたい.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)本研究発表の詳細

ラフ集合の本質は「近似」である.まず,人間にとって,近似はどういう存在なのか?その一つの答として,近似とは,人間の認知・認識能力において不可欠な要素の一つである,という考え方がある.その理由として,人間は (1) 所有するデータの総体 (2) データから情報を引き出す計算力,の少なくとも二点において,有限な存在だからである,という論がある.その有限性ゆえ,人間は原理的に,対象を近似的にしか理解できない,と考えられるからだ.諸々の事象に対して完全な理解が可能なのは,おそらく「神」と呼ばれる存在のみであろう.

ラフ集合論の基本的考え方,それは既知の有限なデータを使って,未知の対象たちを記述し,理解するための数学的枠組を与える,というものだ.ラフ集合論では,まず,既知のデータの下で,同じ性質を持つ対象をグループ化して,ブロック(クラスタ)を構成する.一般に,ブロックは複数個,生成される.これらのブロックを使って,未知の集合にできるだけ近いものを組み立てること,そこにラフ集合の本質がある.しかし,人間にとって,知識が多すぎても,却って対象の本質を理解できない.また,むしろ,逆に,利用する知識を巧妙に限定することで,より効率的な情報処理を実現する,などと,弱点をプラスにしてしまう裏ワザさえ,人間は使っているふしがある.つまり,情報処理における適切な知識ないしデータの量があって,その結果,処理を効率よく遂行するために適当な近似の程度が度合いが存在するのであって,重要な問題は,それを調節するメカニズムの解明である.

(4)本発表の注目点

従来の科学や計算は基本的に,精密さ志向に見える. それに対して,ラフな計算は逆方向の計算もあり? と考えている.粗さを上手に調整すれば,”いい加減”ではなくて,”良い加減”になる,などと期待することになる.例えば,人間観でも,人に概略を伝えればOKの場面では,ラフに報告したら良い感じだが,事細かくクドクド言ったら,以前流行った 「KY」 である.情報化社会はめまぐるしく進展しながら,「計算」にも ”空気読め” と言い出した?そう感じている.

 

 

北海道大学 工学系連携推進部 renkei@eng.hokudai.ac.jp