2012年7月19日

【研究紹介】超小型人工衛星の熱制御

研究紹介 — 11:41 AM

北海道大学大学院工学研究院 機械宇宙工学部門・准教授 戸谷 剛

 

(1)   研究者のアピールポイント

人工衛星、宇宙ステーションの熱制御を研究しています。2006年9月に宇宙へ打上げたHIT-SATでは熱・構造設計を、2010年5月に打上げた超小型宇宙探査機UNITEC-1では熱設計を担当しました。

 

(2)   本発表研究の概要

50cm以下の超小型人工衛星がイノベーションを起こそうとしています。小型化で問題となるのが、熱制御です。熱設計論が確立されていないだけでなく、電力リソース不足より、既存の衛星や惑星探査機で採用された熱制御手法を使うことが難しいからです。超小型人工衛星の研究開発の現状と熱制御について発表します。

 

(3)   本研究発表の詳細

既存の人工衛星は、5~10年の長い開発期間を必要とし、プロジェクト開始から打ち上げまで平均15年かかっています。すぐ結果が欲しい技術開発やスピードの要求されるビジネスでは、15年という長期間は、致命的です。

 

50cm級の超小型人工衛星を用いることで、プロジェクト開始から打上げまでの期間を1年半に短縮するというイノベーションを起こしたい。50cmというハンドリングのしやすさと信頼性を確保するために試験を最小限に留めることで、開発期間を押さえ、衛星の低価格化を実現します。

 

超小型人工衛星の熱設計論は確立していないだけではなく、衛星の小型化は、放熱面積の減少、発電電力の減少に伴うヒーター電力の減少、熱容量の減少に伴う温度変化のしやすさの増加、高密度実装化に伴う発熱集中を引き起こします。既存の中型・大型衛星では、十分な電力と搭載性を生かして、ヒーターやラジエータを使った熱制御方式が採用されてきました。一方、超小型人工衛星では、十分な電力と搭載性が確保できない。そこで、1年半という衛星開発期間にマッチした熱設計論と超小型人工衛星にあった熱制御材料(蓄熱材)の研究開発を行っています。

 

(4)    本発表の注目点

  • 50cm級の超小型人工衛星を用いて、プロジェクト開始から打上げまでの期間を1年半に短縮するというイノベーションを目指していること
  • 1年半という衛星開発期間にマッチした熱設計論と超小型人工衛星にあった熱制御材料(蓄熱材)の研究開発を行っていること

 

 

2012年7月13日

【研究紹介】電子材料・触媒に使うナノ材料の新規設計・合成

研究紹介 — 12:08 PM

(1)研究者のアピールポイント

金属や酸化物材料、半導体などのナノ材料の合成法の開拓とその応用研究に従事している。応用用途も幅広く、電子材料(配線・電極)・触媒(燃料電池・有機化学反応・光反応)をはじめ、質量分析による薬物・毒物の検出、近赤外領域で発光するバイオセンサー、蛍光材料、ナノ粒子を含む透明屈折率制御樹脂など、多くの応用例について検討を重ねている。

 

(2)本発表研究の概要

本発表では、特に電子材料や触媒につかうナノ材料の設計・合成法とその応用展開について紹介したい。私たちは、おもに金属イオンを還元もしくは酸化物に変換する化学法によってナノ材料を合成している。その合成時に用いる副材料や合成温度、条件を細かく制御することにより、非常に使いやすい材料を作っている。こうした匠の技の一部を紹介したい。

 

(3)本研究発表の詳細

本研究では、1 nmから1ミクロンまでの金属ナノ粒子・微粒子を様々な手法を用いて合成し、特に、携帯電話に用いられるコンデンサの中や燃料電池や有機化学反応の触媒として用いる材料として展開している。その合成法は、フラスコの中に混合液を入れ、混ぜる・加熱するなど非常に簡単な手法である。この手法の中に、化学・金属学に裏付けられた様々な知識・技術が凝縮している。さらに、これらの構造をナノ領域をみるための電子の眼を用い、詳しく観察し、その結果を合成法にフィードバックして、よりよいものをより簡便に、効率よく大量合成できるようにプロセス設計を行っている。結果として、たとえば図に示すような、コンデンサの電極に用いられる金属をこれまでのものを代替し、よりよい性能をもたらすことを示した。

こうした手法で合成されるナノ材料は、電子部品、触媒のみならず、様々な分析法の開拓や、これまで用いられてきた有機材料の性質を変えることにも用いられる。その一端について、分かりやすく説明したい。

 

 

コンデンサに用いられる銅電極の電顕写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4)本発表の注目点

フラスコと加熱器を用いて、簡単に最先端のナノ材料を、人間の力でコントロールして作っているところに興味を持っていただけたらと思います。その応用例、解析法についても、分かりやすく説明したいと思います。

2012年7月5日

【研究紹介】光情報を制御する希土類ナノ結晶 ~未来の光産業技術の向上を目指して~

研究紹介 — 3:23 PM

大学院工学研究院 物質化学部門・教授 長谷川 靖哉

 

(1)研究者のアピールポイント

研究者は光化学を基盤としたナノ材料開発に取り組み、これまでナノ構造の強発光体および磁性半導体開発に成功している。その成果はテレビや新聞等にて紹介され、光化学協会奨励賞などを受賞している。

 

(2)本発表研究の概要

現代の光科学技術をさらに発展させるためには、光の持つ特性を自在に操る光機能物質の研究が鍵となる。光情報を高効率に伝達制御できる新しい物質として、本講演では新型半導体・希土類ナノ結晶を紹介する。この希土類ナノ結晶を含むデバイスは次世代の光情報通信や光計測分野への応用展開が期待できる。

 

(3)本研究発表の詳細

光科学技術は現代の通信分野や計測分野を支える重要な研究開発領域である。未来を指向した光情報通信帯域のブロードバンド化や環境・医療分野への光計測技術の進展にともない、光情報を正確かつ高速に伝えるための可視光対応型の光アイソレーター材料が現在強く望まれている。

光アイソレーターとは、材料に磁場を印加することにより光が逆向きに進まないようにフィルターの役目を果たす受動部品である。この光アイソレーターは物質の光磁気効果を利用した光機能素子であり、現在は近赤外光対応型の光アイソレーターが使用されている。

可視光対応型の優れた光アイソレーターの創成は、光情報通信分野だけでなく環境・医療計測分野のさらなる発展に大きく貢献できると考えられる。

新しいファラデー素子用材料として、長谷川は新型半導体EuXナノ結晶に関する研究を行っている(図1)。EuXナノ結晶は400年以上使用可能なEu(II)イオンと酸素や硫黄などから構成される磁性半導体であり、可視光領域に大きなファラデー効果(世界最大値)を示す。本研究発表では、新物質EuXナノ結晶の可視光対応型光アイソレーター材料としての可能性について紹介する。

 

 

 

 

 

図1 半導体EuX結晶
(4)本発表の注目点

新しい機能物質の創成は、新学術領域の開拓だけでなく新産業の創出にも大きな影響を与える。本講演では、新型半導体・EuX ナノ結晶を創出するに至った着眼点・経緯を含め、その科学技術をわかりやすく紹介する。

北海道大学 工学系連携推進部 renkei@eng.hokudai.ac.jp