2012年6月27日

【研究紹介】円偏光発光性高分子の開発 ~3D有機ELディスプレイ・省エネルギーLCDのための光源材料~

研究紹介 — 1:38 PM

大学院工学研究院 生物機能高分子部門・教授 中野 環

 

(1)研究者のアピールポイント

私達の研究室は高分子の精密構造制御を専門としており、らせん構造やπスタック構造などビニルポリマーの立体構造の制御に成功している。最近では、この発表で紹介する発光性高分子の開発、光を用いた高分子の立体構造制御法の開発、人工光合成のための高分子触媒の研究等、光をキーワードとする高分子研究に取り組んでいる。

 

(2)本発表研究の概要

高効率な円偏光発光特性を示すハイパーブランチ型(枝分かれ型)ポリマーを開発した。従来の円偏光発光性高分子は高い性能を発揮させるための熱処理、分子配向処理を必要としたが、本研究で開発した新規高分子は、前処理を一切必要とせずに g値 -0.2~0.4(発光材料が発する右巻き円偏光と左巻き円偏光の強度差を表す指標)を示す。

 

(3)本研究発表の詳細

円偏光発光材料は近年普及し始めた3Dテレビと省エネルギー型高輝度LCD用光源として有望である。しかし、現状の円偏光光源は直線偏光光源に円偏光透過フィルターを組み合わせたものであり、製造工程が複雑で、高コストである。この問題点の克服に最も有効な手法と考えられているのが、光源そのものを円偏光発光体とする有機電界発光材料(LED)の開発である。しかし、これまで開発された円偏光発光性の高分子材料は円偏光発光の効率が低く、効率を向上させるためには高分子の結晶化・液晶化などの前処理が必要であり、デバイス製造工程上の制約が大きかった。前頁に構造を示したハイパーブランチ型ポリマーはこれらの問題点を解決する。このポリマーは400–600 nm の可視光領域に、高い効率で円偏光発光を示す(g 値: −0.2~0.4)。従来の有機高分子発光体では、このレベルのg 値達成のためには液晶化などの分子配列処理(前処理、高温でアニーリング)が必要であり、前処理無しの材料のg 値は10-3~10-2 オーダーであった。これに対して今回開発したポリマーは非晶質である可能性が高く、アニーリング工程を全く必要としない。

 

(4)本発表の注目点

円偏光発光性高分子は3D有機ELディスプレイ(円偏光方式)開発には不可欠の部材であり、次世代のディスプレイデバイスに実用化されることが期待される。

 

 

2012年6月22日

【研究紹介】液パルスインジェクション法によるカーボンナノファイバーの高効率製造 ~熱移動制御による材料製造プロセスの高効率化~

研究紹介 — 2:15 PM

大学院工学研究院 有機プロセス工学部門・教授 向井 紳

 

(1)研究者のアピールポイント

現在まで一貫して炭素材料や多孔質材料等の高機能材の開発に取り組んできた。お金をかければいい物ができるのは当然であるので、高い性能を有する材料をいかに簡単に、そして安く製造するかにずっとこだわり続けている。

 

(2)本発表研究の概要

材料製造プロセスには必ずと言っていいほど熱の流入・流出が伴う。この熱移動を積極的にコントロールすることで既存のプロセスの効率を上げたり、今まで困難であった材料の製造が可能となったりする。本発表はこのようなアプローチにより達成したカーボンナノファイバーの高効率製造について紹介する。

 

(3)本研究発表の詳細

高温の気相中で金属超微粒子触媒を利用して炭化水素蒸気からカーボンナノファイバー等の高機能繊維状炭素が製造可能であることは古くから知られている。しかしこのプロセスの生産性を上げることは難しく、製品の価格は依然として高い。今までのプロセスでは原料は専らガスで製造装置に導入されていた。しかし、ガスは一般に暖めにくい、つまりエネルギーを瞬時に与えることが難しい。これが問題だと考え、原料に瞬間的にエネルギーが与えられるように液パルスとして高温の固体表面に接触するように導入するようにして製造法を改良した。その結果、80%を超える高い炭素収率でカーボンナノファイバーを製造することが可能となった。

    (4)本発表の注目点今回の改良により生産性が向上しただけでなく、安価な原料も利用できるようになり、触媒の使用量を大幅に削減することも可能となった。最終的には製造コストを現在の数十分の一に低減できることが見込まれる。

2012年6月14日

【研究紹介】ソフトマターの3次元構造観察とレオロジー測定法

研究紹介 — 11:15 AM

折原 宏(工学研究院 応用物理学部門・教授)

キーワード:高分子ブレンド、ゾル、エラストマーの観測例

(1)研究者のアピールポイント

液晶、高分子等のソフトマターの物性研究を行なっています。最近、共焦点レーザー顕微鏡とレオメーターを合体したシステムを開発し、ソフトマターの3次元構造変化とレオロジーの関係を調べています。

 

(2)本発表研究の概要

新たに開発したシステムを用いた以下の観測例を紹介します。1)互いに相溶しない高分子ブレンドにせん断流と電場を印加したときの応力変化と構造変化の関係、2)流動下におけるゾル中の速度場測定、3)電場印加時の液晶性エラストマーのひずみテンソル計測。

 

(3)本研究発表の詳細

2種類の互いに相溶しない高分子を混合したある種の高分子ブレンドでは、電場を印加すると見かけの粘度が可逆的に増大することが知られています(電気粘性効果)。一般に2種類の高分子を混合すると一方の高分子がドロップレットになって他方の高分子中に分散します。これに電場を印加すると、図1のようにドロップレットが電場方向に伸びてカラム構造ができ、弾性率が変化します。また、せん断流下では図2(a)に示すようにドロップレット構造をしていますが、これに電場を印加すると(b)のネットワーク構造へと変化し、これに伴って粘度が増大します。このような構造とレオロジーの関係は今回開発したシステムにより初めて明らかになりました。

このシステムを用いるとせん断流下における流動場測定もできます。これを用いて生体物質の水溶液(ゾル)においてせん断流により誘起された相分離を明瞭に観察することに成功しました。

 

(4)本発表の注目点

ソフトマターは文字通り柔らかく、外場(応力、電場等)により容易に変形します。本研究は、このような現象の機構解明およびそのデバイス応用へ役立てることができます。

 

<図1>

 

 

 

 

 

 

 

カラム構造

<図2>

 

 

 

 

 

 

 

 

(a)ドロッププレット構造

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(b)ネットワーク構造

2012年6月13日

【研究紹介】柔軟構造物用回転型アクティブ除振装置

研究紹介 — 4:25 PM

工学研究院 人間機械システムデザイン部門 バイオ・ロボティクス分野 助教 星野 洋平

  HP: http://mech-me.eng.hokudai.ac.jp/~rd/

 

農業用農薬散布機(図1)のブームや人工衛星の太陽電池パネルなどを初めとして、柔軟で長大な構造物の利用がすすみ、軽量で効果的な除振方法が求められている。開発した除振装置は、モータの回転力によってフライホイールを加速し、その回転反力を除振に利用する。柔軟アーム状構造物に取付けるだけで、柔軟構造物のたわみ振動を吸収し、除振効果を発揮することができる(図2)。(特許出願中)

 
応用例:農業用ブームスプレーヤの制振,人工衛星太陽電池パネルの制振、高層ビルの制振

 

 

 

2012年6月11日

【研究紹介】生体硬組織ハイドロキシアパタイト成分のひずみ測定

研究紹介 — 3:40 PM

工学研究院 人間機械システムデザイン部門 バイオ・ロボティクス分野 助教 藤崎 和弘

HP: http://labs.eng.hokudai.ac.jp/labo/biomech/

 

骨や歯の生体硬組織は結晶構造を持つハイドロキシアパタイト(HAp)を含む.HApの結晶構造が組織強度を実現している.本研究ではX線回折を利用し, HApの結晶構造特性に着目した組織ひずみの測定法を提案した.骨や歯のひずみ特性と,HAp結晶の結晶化度や結晶配向といった微視的な構造特性を測定することで,疾患の状態や治療効果を定量的に評価できる.(特許出願中)

北海道大学 工学系連携推進部 renkei@eng.hokudai.ac.jp