(ISS) 異なる心線材質の導線被覆上を燃え拡がる火炎の消炎限界に及ぼす導線の重力方向に対する傾きの影響

1. 研究背景と目的

宇宙船内で起こり得る危険な事故の一つとして、電線による火災が挙げられる。NASAは、宇宙船内へ持ち込む材料の火災安全性を地上における材料燃焼性標準試験 NASA-STD により評価し、その材料の使用の可否を判断している。その標準試験法の1つには、電線の燃焼性標準試験であるNASA-STD test4が含まれている。その試験方法はFig.1のようになっている。電線試料を水平方向から75°に傾けた状態で下端から着火を行い、火炎が15 cm以上燃え拡がった場合は不合格となる。しかし、この試験方法は十分な科学的背景のもとに定められたものとは言えず、例えば試料を75°傾けた状態で試験を行うことについては科学的な根拠は必ずしも明確ではない。

Fig.1

Fig.1 Test 4 method of NASA-STD [1]

 

そこで本研究では、導線被覆上を燃え拡がる火炎の燃焼特性のうち、消炎限界酸素濃度(LOC)に及ぼす導線の重力方向に対する傾きの影響を、心線材質の違う2種類の電線に対して調べ、定性的および定量的に理解することを目的とした。

 

2. 実験概要

実験装置の概略図をFig.2に示す。実験試料を傾けるため、チャンバーの下にジグを置き、燃焼室ごと傾けた。また、チャンバー内部の概略図をFig.3に示す。宇宙船内の換気による流速の影響を模擬するため、必要に応じて、ダクト内に空気流を供給できるようになっている。実験方法としては、イグナイターを用いて電線左端から着火し、火炎が燃え拡がる様子をビデオカメラを用いて撮影すると同時に、燃焼室内に設置した酸素センサーにより、酸素濃度を測定し、LOCを取得する。実験試料については、ポリエチレン被覆ニクロム心線の電線と、ポリエチレン被覆銅心線の電線の2種類を使用する。

Fig.2

Fig.2 Outside of chamber

 

Fig.3

Fig.3 Inside of chamber

 

3. 実験結果と考察

Fig.4に実験結果を示す。θは実験試料と重力方向の角度(仰角)と定義されている。1Gにおけるニクロム電線と銅電線のLOCを比較すると、ニクロム電線のLOCは、θが増加するとともに、LOCは減少している。これに対して、銅電線のLOCは、θ=0°で極大値を持つカーブになっている。この傾向の違いは、熱伝導率がニクロムと銅で大きく違うことに起因していると考えられているが、詳しいことは現在まだわかっておらず、定性定量評価に努めているところである。

また加えて、μGにおける流速条件60 mm/s、100 mm/sのLOCは1GでのどのLOCよりも小さくなっている。したがって、材料火災安全性判定においては、微小重力場における燃焼性拡大の影響を考慮したNASAの燃焼性標準試験に代わる試験方法を制定する必要と考えられる。

Fig.4

Fig.4 LOC as a function of angle for different core material

 

Reference

[1]NASA-STD-6001, Flammability, Offgassing, and Compatibility Requirements and Test Procedures.

 

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