(ISS) 電線上火炎燃え拡がりに被覆材質が与える影響

 1. 研究背景

国際宇宙ステーション(ISS)を始めとする宇宙船内はその閉鎖性と微小重力(μg)という特性から,火災が一旦発生すると対処が非常に困難なため,使用する材料には非常に厳しい基準が設けられています.その中でも宇宙船内に搭載されている膨大な数の電子機器,特に電線被覆は主要な火災発生原因として知られています.

高橋らによる研究[1]によると,ポリエチレン(PE)被覆電線はμg下において1g下よりも”燃えやすく”なる事が明らかになりました.この研究では,燃えやすさが変化する主要な原因として”自然対流の消失”が挙げられています.電線には非常に熱伝導率の大きい金属の心線が含まれており,1g下では火炎によって生じる自然対流によってその心線が冷却される事に伴い燃料となる被覆材も冷却されてしまいます.一方でμgでは自然対流が存在せず,火炎が心線を包み込むような形状になり被覆により多くの熱が供給されると考えられます.

Comparison of 1g and ug

Figure1: 1gとμgの火炎の比較

Figure 1 は1gとμgにおける火炎形状の違いを示した図です.この重力変化に伴う流れ場の変化と火炎形状の違いによって”燃えやすさ”の違いが生じると考えられています.しかしながら,”それぞれの条件でどの程度燃えやすさが変化するのか?”という理論的,定量的な理解は未だなされていません.


 

2. 私たちの研究

今まで電線上の火炎燃え拡がりについて数々の研究が行われてきました.しかし,利用される電線は実験の容易さなどからPE被覆の電線によるものが多くを占めており,実際に航空宇宙産業で利用されている被覆材にPE試料で得た理論が適用できるか,という点については明らかにされておりませんでした.そこで私達は”被覆材質が燃焼性に及ぼす影響”を明らかにするため研究を行っています.

2013年には,Figure 2 とFigure 3 の装置を新たに作成し,難燃性素材の一つであるエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を被覆材とする試料を用いて実験を行いました[2].その結果,ETFE被覆試料では1gとμgの間での燃え広がりに必要な最小限の酸素濃度(LOC)の低下量がPEに比べて非常に大きい事が分かりました.現在も私達はこの研究を続け,いったいどの要素がどの程度燃焼性に影響するのか,という事を解明することに取り組んでいます.

実験装置

Figure2: 実験装置全体図

chamber

Figure3: チャンバー内概念図

 

 

References

[1] S. Takahashi, H. Ito, Y. Nakamura, O. Fujita, Combustion and Flame 160 (2013) pp.1900-1902.

[2] A. F. Osorio, K. Mizutani, C. Fernandez-Pello, O. Fujita, Proceedings of the Combustion Institute 35 (2015) pp.2683-2689.

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