背景写真:ナノ粒子により描かれた北海道」の透過電子顕微鏡写真

背景写真:
「ナノ粒子により描かれた北海道」の透過電子顕微鏡写真


マイクロ波液中プラズマ法によるナノ材料の創成


ここ数年、マイクロ波液中プラズマ法について、装置制作から検討を開始している。

水などの液体中でプラズマを発生させることが可能であることが知られている。プラズマとは固体、液体、気体にプラスし物質のた第4の相と言われている。一般的に通常の気体は電離していないが、プラズマは電離した気体と考えればよく、分子が陽イオンと電子とに分かれて運動している状態である。しかし、系全体としては電荷はない。

プラズマは、気体中の放電などで容易につくることができる。人間が生み出した最も身近なプラズマの例は蛍光灯である。また、溶接、スパッタリング、エッチングなどの加工技術にもプラズマはよく用いられている。また、自然界でもっとも容易にみられる例は雷である。

こうした中で、私たちは大気圧下で主に水などの液体の中でプラズマを発生させる試みをしている。液体中に電極を出して電圧をかけ、放電させることでも液中でプラズマを発生させることができるが、マイクロ波をエネルギー源とすることもできる。装置は下に示したようなもので、マイクロ波が導波管を通じて伝えられ、同軸電極先端にエネルギーを集中して放射する。

実験装置概略図

実験装置概略図

図に示すように、マイクロ波のエネルギーによって電極先端で発生するジュール熱で液体が気化し、電極周囲にバブルが形成される。そのバブルの中にプラズマが発生する。こうして発生したプラズマからはたとえば水の場合、水素ラジカル、OHラジカル、電子、熱、光が発生する。

こうしたプロセスを用いてナノ粒子を合成するプロセスを検討している。

プラズマの点火時の写真

プラズマの点火時の写真

ナノ粒子合成時のプラズマ発生部の写真

ナノ粒子合成時のプラズマ発生部の写真

プラズマ発生によっておこる反

プラズマ発生によっておこる反応

まず、大気圧下でのマイクロ波液中プラズマ法によって金属ナノ材料の製造を試みた。

貴金属の場合は、水素ラジカルもしくは水素ラジカルがプロトンになって発生する電子によって還元される。それによって安定なナノ粒子水分散液を形成することができる。(文献1)

液中プラズマで合成した銀ナノ粒子(文献1から)

液中プラズマで合成した銀ナノ粒子(文献1から)

また、遷移金属では酸化物ナノ粒子を合成することができる。また、還元剤を添加すれば金属ナノ粒子も得られる。我々はZnOナノ粒子の合成に成功した(文献2)。また、還元剤を添加し、ゼラチンを保護分子にすることで金属銅ナノ粒子・微粒子の液中プラズマでの合成にも成功している。(文献3)これらの合成速度は非常に早く、数分でgオーダーのナノ粒子合成も可能である。我々は、本手法は、ナノ粒子の高効率生産の一つの代表的な反応システムとして成立するのではないかと期待している。

液中プラズマ法で合成した酸化亜鉛ナノ粒子のTEM像。b)は高分解TEM像で、結晶格子フリンジが見られる。(文献2から)

液中プラズマ法で合成した酸化亜鉛ナノ粒子のTEM像。b)は高分解TEM像で、結晶格子フリンジが見られる。(文献2から)

還元剤としてイソアスコルビン酸を添加して液中プラズマで合成した銅微粒子のSEM像。(文献3から)

還元剤としてイソアスコルビン酸を添加して液中プラズマで合成した銅微粒子のSEM像。(文献3から)

このマイクロ波液中プラズマ法は、高圧パルス電源を用いる液中プラズマ法にくらべ装置コストが低いという利点があるほか、減圧せずに安定なプラズマを発生させられるという利点があり、他の液中プラズマ法、ソリューションプラズマ法と比べても興味深いものと考えられ、多くの事例を試験しようと努力している。このようにマイクロ波液中プラズマ法は、ナノ材料の大量合成に適しており、さらに、プラズマを用いながら、真空法と異なり、機能性材料を創出することが可能です。

  1. Susumu Sato, Kunihiko Mori, Osamu Ariyada, Atsushi Hyono, Tetsu Yonezawa, “Synthesis of nanoparticles of silver and platinum by microwave-induced plasma in liquid”, Surface & Coating Technology, 205(5), 955-958 (2011) DOI: 10.1016/j.surfcoat.2011.03.110
  2. Tetsu Yonezawa, Atsushi Hyono, Susumu Sato, Osamu Ariyada, “Preparation of Zinc Oxide Nanoparticles by Using Microwave-induced Plasma in Liquid”, Chemistry Letters, 39(7), 783-785 (2010) DOI: 10.1246/cl.2010.783
  3. 成島隆, 吉岡隆幸, 宮崎英機, 菅育正, 佐藤進, 米澤徹 「マイクロ波液中プラズマ法による銅微粒子の合成」 Takashi Narushima, Takayuki Yoshioka, Hideki Miyazaki, Ikumasa Suga, Susumu Sato, Tetsu Yonezawa, “Preparation of Copper Particles by Microwave Induced Plasma in Liquid Process” 日本金属学会誌, Journal of the Japan Institute of Metals and Materials, 76(4), 229-233 (2012)