背景写真:ナノ粒子により描かれた北海道」の透過電子顕微鏡写真

背景写真:
「ナノ粒子により描かれた北海道」の透過電子顕微鏡写真


ナノ構造を用いる新しい材料創成


金属ナノ粒子の構造を制御して合成することは、新しい物性をナノ構造に期待する上で重要な研究テーマである。私たちの研究室でも微細構造の制御、ナノ粒子の形の制御などを行い、ナノ粒子の新しい可能性を見出そうとしている。

多くの場合、ナノ粒子を安定に分散状態で得ようとすれば、次のような分散安定化剤、いわゆる保護剤を添加する必要がある。しかしながら、一方で、分散安定性を求めなければこれらを添加する必要は特にない。

ナノ粒子の安定分散に必要な保護剤の例

ナノ粒子の安定分散に必要な保護剤の例

粒子径が均一なナノ粒子の合成には、均一な溶液から合成するのが一般的である。しかしながら、均一な溶液からの還元反応では、そのソースである金属塩の濃度は時々刻々と変化する。このとき、粒子の核生成・成長を制御することは難しい。

我々はPVPを用いてナノ粒子を合成し、その粒子径や、合金の原子配置などの制御を行ってきた。また、還元剤として各種試薬を用いてきた。還元剤の違いによってナノ粒子の形状は異なる。

たとえば、面白い例として水素化ホウ素ナトリウムで直接塩化白金酸を還元する方法がある。これは、反応が激しいので、論文をよく読み化学をよく知る先生とやってほしい方法である。塩化白金酸水溶液に水素化ホウ素ナトリウムをそのまま導入すると一気に還元が起こり、形状がナノフラワーともいうべき、花びら様の突起をたくさんもった白金ナノ粒子を創ることができた。

 

白金ナノフラワーのSEM、TEM画像

白金ナノフラワーのSEM、TEM画像

 

そして、こうした白金ナノフラワーは、レーザー脱離イオン化質量分析用のイオン化試薬として有効であることが示されたのである。これは、パルスレーザーを照射した際のエネルギーが白金先端に集積するために、高効率で分子が脱離・蒸発することが原因の一つと考えている。

1) Hideya Kawasaki, Tetsu Yonezawa, Takehiro Watanabe, Ryuichi Arakawa, “Platinum nanoflowers for surface-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry of biomolecules”, Journal of Physical Chemistry C, 111(44), 16278-16283 (2007).

2) Hideya Kawasaki1, Teruyuki Yao, Takashi Suganuma, Kouji Okumura, Yuichi Iwaki1, Tetsu Yonezawa, Tatsuya Kikuchi, Ryuichi Arakawa, “Platinum Nanoflowers on Scratched Silicon by Galvanic Displacement for an Effective SALDI Substrate”, Angew. Chem. Int. Ed., 16(35), 10832-10843 (2010).

白金ではそのほかにもコンペイトウ様のナノ粒子なども得られるほか、ニッケルでもワイヤー状のナノ粒子が得られる。これらの高温での挙動も興味があり、高温TEMによる実験を行っている。これらのことについては加熱TEMその場観察法で再度触れることにする。

3) Takashi Narushima, Takuya Makino, Tokunaga Tomoharu, Tetsu Yonezawa, “Observation of Microstructural Changes in Polymer-Coated Kompeito-Type Platinum Particles by In Situ Heating TEM”, Journal of Nanoscience and Nanotechnology, 12(3), 2612-2616 (2012).

4) Takashi Narushima, Ren Lu, Tetsu Yonezawa, “Wet Preparation of Organic Stabilizer Free Urchin Structured Nickel Fine Particles and Their In-situ TEM Observation at High Temperature”, Journal of Japan Institute of Metals and Materials, 78(2), 98-102 (2014).

また、ナノ構造の形成において、ポーラスな構造も非常に興味が持たれる。ポーラスな構造形成には、陽極酸化などの方法もよく知られるが、合金板からの脱合金(dealloy)も有力な手法である。Dealloyは合金板を酸に含浸するなどし、一方の金属のみを酸化させ溶解させる方法である。電気化学的手法を用いることもある。我々は、銅-白金板からの脱合金法によって白金ポーラス構造を形成し、その微細構造などについて検討を行った。

5) K. Maruya, R. Yamauchi, T. Narushima, S. Miura, T. Yonezawa, “Structure consideration of platinum nanoparticles constructing nanostructures obtained by electrochemical dealloying of a Cu-Pt alloy.”, Journal of Nanoscience and Nanotechnology, 13(4), 2999-3003 (2013).