Research

(1) 最適化技術の開発:遺伝的アルゴリズム,実験計画法,多目的最適化など最適化技術開発と最適化プログラム開発

最適化や最適設計は,あらゆる工学分野と産業に深く関わる大変重要な技術です.モノを大事に使う「エコ社会」の到来とともに人間生活の根源に関わる考え方です.本研究室では,主に機械製品や複合材料構造物などへの適用を研究するとともに,遺伝的アルゴリズムや積層材料への層別最適化法など,技法の開発も行っています.下は,複数の目的を同時に満たす多目的最適化,また複数の設計変数を同時に最適化する統合最適化結果の一例です.また,PSO,ACOなど生物界からヒントを得たメタヒューリスティックな新手法の応用やタグチメソッドによる実用的手法を研究しています.

 

(2) モノの認識に関する感性評価:モノの物理的要素と主観的要素による感性評価,新たな評価手法の開発,ユーザーカテゴリの提案

機械系の製品群では様々な形状のデザインが使われています.これは構造力学的な理由もありますが,製品表面の形状がユーザーに強い印象を与えて,購買意欲を刺激する要素となっているからです.例えば自動車デザインでは,その曲面スタイリングはデザインの中心課題です.このような人間の感性と工業製品との関わりを扱う工学分野を「感性工学」と呼びます.特に,「感性評価」に関する分野では,モノを作るデザイナーのみならず,モノを使うユーザーの直感的で主観的な感性情報を得る方法を研究しています.本研究室では,平面から立体,実物モデルから仮想モデル, 製品の色バリエーションや配色などの色彩感性までを扱っています.3Dプリンターや3Dスキャナーを使い,創造的な評価手法を試みることで,感性のメカニズムを明らかにしていくことを目指しています.

(3) Multi-Body Dynamics:多リンク系の大変位解析と測定

自動車,ロボットなど,多くの機械システムは,各部品が結合して成り立っています.それらの運動を予測し,数値的に解くための非線形動力学理論としてマルチボディダイナミクスが発展しました.これにより,多数の物体や部品からなる構造物や機械の運動と制御を扱うことができます.本研究室では,懸垂構造系を対象に,解析方法と高速度運動計測による,実験測定を行っています.今後はこれを拡張して,大きく変形するソフトな材料から成る構造の解析方法へと発展させる予定です.

(4) 複合材料構造の強度,振動,座屈などの力学解析: 解析モデルの開発と最適化手法の適用例

炭素繊維強化複合材料(CFRP)は,高い比剛性と比強度の特徴を活用して宇宙航空分野で多用されていますが,近年ではコスト低減が進み,自動車産業へも広く利用が拡大しています.しかし異方性材料を積層するため力学解析が難しく,また構造最適化に適した材料と言われ研究が活発になされながらも,その方法は実用段階より研究レベルに留まるものが多い現状です.
本研究室では,例えば材料異方性,材料特性の2値性(引張と圧縮で異なる弾性定数)などを考慮した,様々な解析ソフトおよびモデルを開発し,図6,7のような具体的な応用例に対して,解析および最適化計算を行っています.

また,自然界の材料に着想して,局所的な異方性(図8)や,曲線状の強化繊維を持つ複合材料(図9, 10)を提案し,その解析手法や最適化手法を開発しています.曲線状の繊維は,従来の直線状の強化繊維を持つ材料よりも,振動数や面内強度の面で優れた機械的性質を示すことが明らかになってきており,機械構造物の高性能化に貢献できます.

(5) システム工学技法による機能,故障,事故解析:ISM法, DEMATEL法による風力発電システムの解析

工業製品には,長年の研究と経験が反映された高度な製品から,十分な開発期間がなくニーズに応じて製造され,設計指針が十分確立されていないものがあります.こうした製品の信頼性を確立するためには,機能を分析して要素間の関係を明らかにする構造モデリングが重要です.本研究室では,システム工学分野で利用されるISM法とDEMATEL法を適用して,機械やシステムの機能グラフ表現を行うと共に,故障原因の相関関係をマトリックス表現して機能と故障原因の相関を統計的な観点から解析,その相互関係を明らかにする方法を研究しています.

(6) ナノ・マイクロ材料を用いた複合材料に関する研究

強度特性に優れたナノレベルの材料であり,エネルギー,家電、エレクトロニクス,化学,複合材料への応用が期待され,その市場規模は2020年には数千億円になると予想されています.CNTの用途の一つとして,マイクロレベルからサブマイクロレベルでの複合材料への応用があります.これにより,CNTの優れた比強度,熱伝導性を生かした複合材料を開発することが期待されています.しかしながら,CNTのナノレベルの優れた特性をマクロレベルで発揮させるためには,母材内の分散状態を制御する必要があります.本研究室ではCNTを金属母材に含有させた複合材料にさまざまな変形を与えることにより.母材に生じる転位などの微視的変化を利用しCNTを集積化させて,CNTのナノレベルの特性を最大限に生かせるマクロ構造を構築する方法について検討しています.また,CNT複合材料の変形や熱的特性を効率的に計算するために,従来分子動力学により行われているCNTの構造解析を,連続体的に取り扱うマルチスケール解析の手法についても検討しています.

(7) マイクロステントの開発

人口構成の高年齢化により,高脂血症などによる血管狭窄,癌などによる気管や尿道の狭窄が増えています.その治療には生体内ストレッチャの一つであるステントが用いられます.ステントは主に金属を材料とする網目構造を持ち,狭窄部に挿入された後に拡張し狭窄部を取り除きます.既製ステントは規格化され狭窄状態の個人差を考慮することができませんでした.しかし複雑な部位へは狭窄形状を考慮したテーラーメイド設計が必要です.このためには,ステントの構造と変形との関係を明確にし,ステントの変形をその構造から制御する手法が必要です.本研究室では,バルーン拡張型ステントを任意に変形させる手法を開発するため,有限要素解析によりステントの特性を明らかにし,より優れたステントの開発を研究しています.

(8) 電子実装基板の変形解析

物性の異なる樹脂,銅,シリコン,はんだ等から構成されている電子実装基板では,従来から線膨張係数の違いに起因して生じるパッケージ内部のひずみや応力および基板のたわみが大きな問題です.CSP(Chip Size Packaging),SiP(System in Packaging)や,SiPをさらに組み合わせた多層パッケージPoP(Package on Package)などに代表される電子実装基板の小型化・複雑化により,さらにその深刻度が増すと想定されています.このため多層電子実装基板の安全性や信頼性評価のための新しい技術開発が必要不可欠であり,この技術開発の成否が,わが国の電子実装産業が国際的に優位な立場を継続できるか否かにかかっていると言っても過言ではありません.そこで本研究では,小型化・複雑化されたパッケージの安全性・信頼性を保つ設計のために,それぞれの構成材料のマイクロレベルでの組織状態および強度評価とサブマイクロサイズでの強度評価,および,パッケージ全体を一つの複合材料と捉えた等価複合モデルによるマクロサイズでの強度評価を融合したマルチレベルデザインによる最適構造解析手法の構築を目指しています.

(9) モバイルデバイス熱制御システムの開発

近年,スマートフォンやタブレット端末等のように高機能化,高性能化された電子機器が普及している.高機能・高性能化に加えて小型化が進んでおり,発熱密度の増加だけでなく,放熱に必要な表面積の減少をもたらしている.これにより,局所的な温度上昇が起こったり,低温火傷を引き起こしたりする可能性が高まってしまう.この問題を解決するため,本プロジェクトではモバイルデバイスを対象とした新たな熱制御システムの開発を行っている.

(10) 臨床応用を目的とした膝関節安定性に関する研究

膝は体内で最も負荷がかかり,損傷しやすい関節である.スポーツや怪我による力学的な異常は変形性関節症(OA)等の慢性疾患につながる可能性が高い.そのため,新たな治療法の開発は,生体工学および整形外科の分野で大きな課題となっている.定量的に膝関節の力学特性を測定することは,関節内の各組織の役割を知る上で極めて重要な項目である.したがって,本プロジェクトの目的は,膝関節の力学的特性を定量的に評価するための新技術を開発することである.

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