研究テーマ

 生体骨のマイクロ・ナノメカニクス

生体骨は,主成分であるミネラル・コラーゲンからなるナノレベルの分子・結晶構造から,皮質骨・海綿骨といったマクロレベルの組織構造まで複雑な階層構造をとっています.このような骨の構造が身体を支える力学的特性に需要な役割を果たしていると考えられています.
微視的には骨は無機成分のハイドロキシアパタイト(HAp)結晶と有機成分のコラーゲン分子からなる複合構造をとっています.近年,加齢や骨粗鬆症における骨強度低下について,これら微視構造に関わる「骨質」の重要性が指摘されています.本研究室では,骨の微視構造と力学的特性の関係に着目し,X線回折法やラマン分光法を用いたHAp結晶およびコラーゲン分子の構造・力学計測に関する研究を行っています.骨組織にX線を照射することでHAp結晶ならびにコラーゲン分子の両者の構造情報を含む回折光が同時に得られます.この情報から外的負荷に対する両者のふるまいを可視化し,骨ミネラルおよびコラーゲン分子の力学的役割の解明に取り組んでいます.またラマン分光法による骨構造解析では,レーザー照射によって発生する散乱光特性(ラマンスペクトル)から物性情報を取得する手法です.この手法でも,HAp結晶とコラーゲン分子の情報が同時に得られ,微視構造の違いをはっきりと見ることが可能となります.最近の研究成果では,ラマンスペクトルは力学状態の情報も含んでいることが確認され,骨の構造特性のみならず力学特性を可視化することで,骨の機能を診断する新しい評価手法の開発に取り組んでいます.
また骨粗鬆症では,主に海綿骨が多く占める部位での骨折が多く見られます.海綿骨は,骨梁と呼ばれる小さな梁状の骨が3次元編目状に配列した構造をしています.海綿骨全体の強度は皮質骨の十分の一以下であり,骨梁構造に依存することが知られていますが,一つひとつの骨梁は長さが1㎜程度と非常に小さいため骨梁単体の力学的特性は未だ明らかにされていません.本研究室では,海綿骨から骨梁レベルの力学的特性の計測方法や,それぞれの力学的特性に及ぼす構造特性について研究しています.

bone_web

キーワード:皮質骨階層構造、海綿骨骨梁構造、HAp結晶、コラーゲン分子、X線回折、ラマン分光、マイクロCT

プロジェクト:
・X線回折による骨有機・無機成分の力学挙動計測 (MC2: 兼吉)
・皮質骨-海綿骨構造における骨梁弾性率 (MC2: 長尾)
・皮質骨有機・無機ラマンシフトの負荷応答と加齢の影響 (MC1: 幸村)
・振り子式衝撃試験による皮質骨強度測定 (MC1: 内藤)

関連記事:
「機械工学の視点から新しい骨機能診断を目指す」 准教授 東藤正浩
  大学院工学研究院・工学院広報誌えんじにあRing, No. 392
「骨組織の力学的特性と階層構造特性の関係 骨粗しょう症の予防・治療に寄与する研究」 助教 山田悟史
  工学系連携推進部すごいね!クールラボラトリー[研究者紹介]

 生体関節の力学的機能評価

生体関節は,荷重の伝達と潤滑という優れた力学的機能をもつ一方,乏血行性により自然修復がほとんど期待できず,損傷を受けた場合,徐々に変性が進行し,変形性関節症などの症状になる危険性を有しています.そのため変性の早期特定と保存的治療法の開発が重要となっています.本研究室では,関節機能評価法の一つとして,振り子式関節摩擦測定機を作製し,変形性関節症による関節摩擦特性への影響や,薬剤投与による効果の定量的評価を行っています.また,ラマン分光法を利用した分子構造解析に基づく関節軟骨の非侵襲力学機能診断手法の開発にも取り組んでいます.

joint_web

キーワード:振り子式関節摩擦測定、ラマン分光計測、薬剤効果

プロジェクト:
・ラマン分光法によるブタ膝関節軟骨の力学応答解析 (MC2: 北山)
・振り子運動計測によるウサギ膝関節の摩擦特性評価 (MC1: 酒井)

 運動機能評価システムの開発

本研究室では,ウェアラブルセンサによる歩行計測システムを開発しています.本システムでは,人間の下肢に加速度センサと角速度センサを取り付け,歩行中の加速度・角速度データから下肢の関節角度や関節位置を算出する数値モデルを示してきました.本システムによると,どこでも歩行計測が可能で,病院の狭い診療スペースでも歩行計測ができる可能性があります.現在,下肢疾患患者の治療・リハビリ訓練の効果診断への応用や,屋外の一般路や雪道,斜面路,階段等の歩行計測を研究しています.

gait_web

キーワード:加速度・角速度センサ、歩行計測、筋電位計測

プロジェクト:
・徒手筋力検査における上腕個別筋活動 (MC2: 北井)