コンテンツに他者の著作物を引用する際の注意事項

eラーニングコンテンツへの他者の著作物利用について

本テーマについて、CEEDでは2012年10月30日に工学系教員を対象としたFacultyDevelopmentの場で発表しました。下記に当日の配布資料内容を記載します。

eラーニングコンテンツへの他者の著作物利用について

―原則と法的根拠、放送大学の経験・助言、北大の改善案―

1.他者の著作物利用をする際の原則と無断利用の法的根拠

原則:他者の著作物を利用する場合は、著作権者(著作者、出版社)の了解を得ることが原則です。
無断利用できる場合の法的根拠:

(引用)著作権法第32条「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」
(出所の明示)著作権法第48条「次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
 1 第32条・・・の規定により著作物を複製する場合」

2.放送大学 尾崎史郎教授からいただいた助言と、判例

法律は抽象的であるため、判例を調査する切り口から放送大学から助言をいただいた。

Q1 eラーニングコンテンツに関連する判例はあるか?
A1 調査しているが見つからない。

Q2 論文へ引用する際の注意事項は、eラーニングコンテンツに当てはまるか?
A2 判例は見当たらないが、仮に裁判が起こされて裁判官が判断をするとしたら、
 ① 数ページの論文の中での部分的な引用が行われている場合
 ② eラーニングコンテンツとして使われるパワーポイントの1ページの内容全てが引用である場合とでは印象が異なると推定される。(②の方が法律違反の判断がされやすい)

Q3 eラーニングコンテンツについて何故判例が無いのか?
A3 利益を求めた活動ではないため、著作権者から苦情が寄せられた時点で和解がされやすい、またeラーニングコンテンツが比較的少人数の閉じた範囲で利用されているためとも考えられる。

Q4 eラーニングコンテンツに他者の著作物を利用することを申し込んだ時の利用料金は?
A4 ある大学の例では、100件程の利用の申込をし、ほとんどは無料でOKされた。使用料を請求されたのは数件で、使用料も全体で20万円から30万円程度であったとの話を聞いたことがある。お金の問題よりも感情的な面が反映されることがあり、「自分のお寺の写真を使う場合は、XX社撮影の写真は使わないで欲しい」という回答もあった。なお使用料には相場というものは無く、著作物を提供する人の意思によって決まる。

Q5 その他に拠り所は?
A5 教科書などの書籍を著作する際と同様に“引用”に注意を払えば、問題はないと考えられる。

著作物性に関する判例: 全ての資料が著作物というわけではないということを示しており重要
番号は、平成24年度教育著作権セミナー資料と同一(2012/9/4北大で開催されたセミナーで配布)

① データの著作物性を否定した事案(名古屋地裁平成12年10月18日判決「自動車部品生産流通調査」事件(判例タイムズ1107号293頁))

② 事実を素材とするものでも文章表現に創作性があれば著作物に該当するとした事案(東京地裁平成10年10月29日判決「SMAPインタビュー記事」事件(判例時報1658号166頁))

⑤ データを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは著作物ではないとした事案(知財高裁平成17年5月25日判決「京都大学博士論文事件」(裁判所HP))

⑦ 数学に関する命題の解明過程自体は思想そのものであり著作権保護の対象外とした事案(大阪高裁平成6年2月25日判決「野川グループ」事件(判例時報1500号180頁))

⑨ 客観的事実、手順・手法、アイデア自体は著作権保護の対象外とした事案(東京高裁平成13年9月27日判決解剖実習の手引き」事件(判例時報1774号123頁))

⑬ 建築の著作物とは芸術的な建築物をいうとした事案(大阪地裁平成15年10月30日判決「モデルハウス」事件(判例時報1861号111頁))

⑮ プログラムの具体的記述が、ごくありふれたものであれば創作性がないとした事案(東京地裁平成15年1月31日判決「製図プログラム」事件(判例時報1820号127頁))

3.この資料のまとめ

他者の著作物を利用する場合は、著作権者の了解を得ることが原則
引用をする際には、著作物性に関する判例(否定する判例)があるので参考にできる。
eラーニングコンテンツに他者の著作物を引用する場合は、教科書などの書籍を著作する際と同レベルの注意を払う必要があると考えられる。
注:この紙面で「引用」は著作権法32条の範囲で著作権者に無許可で利用することを言います。

4.今後の改善のための議論案とお知らせ

4.1 教員がeラーニングコンテンツを安心して制作できる環境を整備したい。
(案1)万が一の際に相談できる弁護士の配置検討
(案2)eラーニング内規を北大全学レベルへ展開する活動

4.2 eラーニングコンテンツの専攻別長期計画を立てていただきたい
目標:各専攻8科目とする。理由:大学院主専修科目16単位分に該当、海外長期インターンシップ派遣前に集中受講することが可能。

4.3 英語による講義を撮影し、eラーニングとして海外の協定大学へ配信する活動をCEEDが行っています。英語による講義の撮影についても協力をお願いします。

 連絡先:CEED eラーニング教育プログラム:ceed-con@eng.hokudai.ac.jp
 文責 2012/10/30 CEED篠原潤一

著作権に関する判例

1.著作物性に関する判例

①データの著作物性を否定した事案(名古屋地裁平成12年10月18日判決「自動車部品生産流通調査」事件(判例タイムズ1107号293頁))

「本件データは、…をまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。…データ自体は、仮にその集積行為に多額の費用、時間及び人員を費やしたものであったとしても著作権法の保護の対象となるわけではない。

②事実を素材とするものでも文章表現に創作性があれば著作物に該当するとした事案(東京地裁平成10年10月29日判決「SMAPインタビュー記事」事件(判例時報1658号166頁))

『創作的』とは、表現の内容について独創性や新規性があることを必要とするものではなく、思想又は感情を表現する具体的形式に作成者の個性が表れていれば足りる。したがって、客観的な事実を素材とする表現であっても、取り上げる素材の選択、配列や、具体的な用語の選択、言い回しその他の文章表現に創作性が認められ、作成者の評価、批判等の思想、感情が表現されていれば著作物に該当するということができる。

③外部的表現に著作者の個性が何らかの形で表れていれぱ足りるとした事案(東京高裁昭和62年2月19日判決「当落予想表」事件(判例時報1225号111頁))

「『思想又は感情』とは、人間の精神活動全般を指し、『創作的に表現したもの』とは、厳格な意味での独創性があるとか他に類例がないとかが要求されているわけではなく,『思想又は感情』の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現われていれば足り、『文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する』というのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。」

④ニュース記事の見出しは創作性を発揮する余地が比較的少ないとした事案(知財高裁平成17年10月6日判決「ヨミウリ・オンライン」事件(裁判所HP))

「一般に、ニュース報道における記事見出しは、報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか、使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して、表現の選択の幅は広いとはいい難く、創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり、著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。しかし、ニュース報道における記事見出しであるからといって、直ちにすべてが著作権法10条2項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく、その表現いかんでは、創作性を肯定し得る余地もないではないのであって、結局は、各記事見出しの表現を個別具体的に検討して、創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。」
注:この事案では、365の記事見出しはいずれも創作性がある表現とまではいえないとして著作物性が否定された。

⑤データを一殿的な手法に基づき表現したのみのグラフは著作物ではないとした事案(知財高裁平成17年5月25日判決「京都大学博士論文事件」(裁判所HP)

「実験結果等のデータをグラフとして表現する場合,折れ線グラフとするか曲線グラフとするか棒グラフとするか,グラフの単位をどのようにとるか,データのー部を省略するか否かなど,同一のデータに基づくグラフであっても一様でない表現が可能であることは確かである。しかしながら,実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。」

著作物性が否定されたグラフ

⑥自然科学上の法則、発見、技術的思想自体は著作権保護の対象外とした事案(大阪地裁昭和54年9月25日判決「発光ダイオード学位論文」事件(判例タイムス397号152頁))

「著作物として著作権法が保護しているのは、思想、感情を、言葉、文字、音、色等によって具体的に外部に表現した創作的な表現形式であって、その表現されている内容すなわちアイディアや理論等の思想及び感情自体は、たとえそれが独創性、新規性のあるものであっても、小説のストーリー等の場合を除き、原則として、いわゆる著作物とはなり得ず、著作権法に定める著作者人格権、著作財産権の保護の対象にはならないものと解すべきである(アイディア自由の原則)。殊に、自然科学上の法則やその発見及び右法則を利用した技術的思想の創作である発明等は、万人にとって共通した真理であって、何人に対してもその自由な利用が許さるべきであるから、著作権法に定める著作者人格権、著作財産権の保護の対象にはなり得ず、ただそのうち発明等が著作者人格権・著作財産権とは別個の特許権、実用新案権、意匠権等の工業所有権の保護の対象になり得るに過ぎないと解すべきである。もっとも、自然科学上の法則やその発見及びこれを利用した発明等についても、これを叙述する叙述方法について創作性があり、その論理過程等を創作的に表現したものであって、それが学術、美術等の範囲に属するものについては、その内容とは別に、右表現された表現形式が著作物として、著作者人格権・著作財産権の保護の対象となり得るものと解すべきである。」

⑦数学に関する命題の解明過程自体は思想そのものであり著作権保護の対象外とした事案(大阪高裁平成6年2月25日判決「野川グループ」事件(判例時報1500号180頁))

「数学に関する著作物の著作権者は、そこで提示した命題の解明過程及びこれを説明するために使用した方程式については、著作権法上の保護を受けることができないものと解するのが相当である。一般に、科学についての出版の目的は、それに含まれる実用的知見を一般に伝達し、他の学者等をして、これを更に展開する機会を与えるところにあるが、この展開が著作権侵害となるとすれば、右の目的は達せられないことになり、科学に属する学問分野である数学に関しても、その著作物に表現された、方程式の展開を含む命題の解明過程などを前提にして、更にそれを発展させることができないことになる。このような解明過程は、その著作物の思想(アイデア)そのものであると考えられ、命題の解明過程の表現形式に創作性が認められる場合に、そこに著作権法上の権利を主張することは別としても、解明過程そのものは著作権法上の著作物に該当しないものと解される。」

⑧学説・思想自体は著作権保護の対象外とした事案(東京地裁昭和59年4月23日判決「日本の名著・三浦梅園」事件(判例タイムズ536号440頁))

「原告は…被告書の記述部分は…原告著作物の記述部分に表わされた原告の学説ないし思想を盗用したものであり、これは原告の著作権を侵害するものである旨主張するが、学説ないし思想それ自体の保護が著作権法の保護の範ちゆうに属するものでないことはいうまでもなく、原告の右主張は主張自体失当というべきである。」

⑨客観的事実、手順・手法、アイデア自体は著作権保護の対象外とした事案(東京高裁平成13年9月27日判決「解剖実習の手引き」事件(判例時報1774号123頁))

「本件書籍に記載されているような、人体の各器官の構造、各器官と動静脈及び神経叢との各位置関係等についての客観的な事実はもちろん、解剖の手順・手法も、これらに関する考え(アイデア)も、それ自体は、本来、誰に対しても自由な利用が許されるべきものであって、特定の者に独占させるべきものではないことは、当然というべきである。したがって、解剖実習書である本件書籍についていえば、著作権法上の著作物となる根拠としての表現の創作性となり得るのは、表現された客観的事実自体、手順・手法自体やアイデア自体の有する創作性ではなく、これらの創作性を前提にし、これを当然の出発点としてもなおかつ認められる表現上の創作性に限られるものというべきである。」

⑩応用美術について著作物性を認めた事案

長崎地裁佐世保支部昭和48年2月7日決定「博多人形」事件(無体例集5巻1号18頁)

「本件人形「赤とんぼ」は…その姿体、表情、着衣の絵柄、色彩から観察してこれに感情の創作的表現を認めることができ、美術工芸的価値としての美術性も備わっているものと考えられる。…従って、本件人形は著作権法にいう美術工芸品として保護されるべきである。」

神戸地裁姫路支部昭和54年7月9日判決「仏壇彫刻」事件(無体例集11巻2号371頁)

「実用品に利用されていても、そこに表現された美的表象を美術的に鑑賞することに主目的があるものについては、純粋美術と同様に評価して、これに著作権を付与するのが相当である」

⑪応用美術について著作物性を否定した事案

京都地裁平成元年6月15日判決「佐賀錦袋帯」事件(判例時報1327号123頁)

「帯の図柄のような実用品の模様として利用されることを目的とする美的創作物については…純粋美術としての性質をも有するものであるときに限り、美術の著作物として著作権法により保護すべきものとしているものと解されるが、ここにいわゆる純粋美術としての性質を有するか否かの判定にあたっては、主観的に制作者の意図として専ら美の表現のみを目的として制作されたものであるか否かの観点からではなく、対象物を客観的にみてそれが実用性の面を離れーつの完結した美術作品として美的鑑賞の対象となりうるものであるか否かの観点から判定すべきものと考えられる」

東京高裁平成3年12月17日判決「木目化粧紙」事件(判例時報1418号120頁)

応用美術のうち、例えば実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作されたものは、…高度の芸術性(すなわち、思想又は感情の高度に創作的な表現)を有し、純粋美術としての性質をも肯認するのが社会通念に沿うものであるときは、これを著作権法にいう美術の著作物に該当すると解することもできるであろう。」

⑫タイプフェイスや書の字体の著作物性を否定した事案(最高裁平成12年9月7日判決「印刷用書体ゴナU」事件(判例時報1730号123頁))

印刷用書体がここにいう著作物に該当するというためには、それが従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であり、かつ、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならない…印刷用書体は、文字の有する情報伝達機能を発揮する必要があるために、必然的にその形態には一定の制約を受けるものであるところ、これが一般的に著作物として保護されるものとすると、…わずかな差異を有する無数の印刷用書体について著作権が成立することとなり、権利関係が複雑となり、混乱を招くことが予想される。」

⑬建築の著作物とは芸術的な建築物をいうとした事案(大阪地裁平成15年10月30日判決「モデルハウス」事件(判例時報1861号111頁))

通常のありふれた建築物は、著作権法で保護される『建築の著作物』には当たらないというべきある。…一般住宅が同法10条1項5号の『建築の著作物』であるということができるのは、一般人をして、一般住宅において通常加味される程度の美的要素を超えて、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような芸術性ないし美術性を備えた場合、すなわち、いわゆる建築芸術といい得るような創作性を備えた場合であると解するのが相当である」

⑭版画写真の創作性を否定した事案(東京地裁平成10年11月30日判決「版画写真」事件(判例時報1679号153頁))

撮影対象が平面的な作品である場合には,正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上,右認定のような技術的な配慮も,原画をできるだけ忠実に再現するためにされるものであって,独自に何かを付け加えるというものではないから,そのような写真は,『思想又は感情を創作的に表現したもの』ということはできない。」(東京地裁平成10年11月30日判決「版画写真」事件(判例時報1679号153頁))

⑮プログラムの具体的記述が、ごくありふれたものであれば創作性がないとした事案(東京地裁平成15年1月31日判決「製図プログラム」事件(判例時報1820号127頁))

「プログラムは、その性質上、表現する記号が制約され、言語体系が厳格であり、また、電子計算機を少しでも経済的、効率的に機能させようとすると、指令の組合せの選択が限定されるため、プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。…また、著作権法は、プログラムの具体的表現を保護するものであって、機能やアイデアを保護するものではないところ、特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が、極くありふれたものである場合に、これを保護の対象になるとすると、結果的には機能やアイデアそのものを保護、独占させることになる。したがって、電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が、このような記述からなる場合は、作成者の個性が発揮されていないものとして、創作性がないというべきである

⑯二次的著作物の著作権は新たに付与された創作的部分のみについて生じるとした事案(最高裁平成9年7月17日判決「ポパイ・ネクタイ」事件(民集51巻6号2714頁))

二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。」

⑰編集著作物の保護は抽象的な選択・配列方法を保護するものではないとした事案(東京地裁平成12年3月23日判決「色画用紙見本帳」事件(判例時報1717号140頁))

著作権法12条1項は、編集物でその素材の選択又は配列に創作性のあるものを著作物(編集著作物)として保護する旨を規定するが、これは、素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的表現を保護するものであり、素材及びこれを選択・配列した結果である実在の編集物を離れて、抽象的な選択・配列方法を保護するものではない。当該編集物が何を素材としたものであるのかについては、当該編集物の用途、当該編集物における実際の表現形式等を総合して判断すべきである」

2.著作者に関する判例

①思想・感情を創作的に表現したと評価できない者は著作者ではないとした事案(東京地裁平成10年10月29日判決「SMAPインタビュー記事」事件(判例時報1658号166頁))

現実に当該著作物の創作活動に携わった者が著作者となるのであって、作成に当たり単にアイデアや素材を提供した者、補助的な役割を果たしたにすぎない者など、その関与の程度、態様からして当該著作物につき自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は著作者に当たらない。…文書として表現された言語の著作物の場合は、実際に文書の作成に創作的に携わり、文書としての表現を創作した者がその著作者であるというべきである。

②描くものの指示や修正の指示は著作行為と評価できないとした事案(東京地裁平成9年3月31日判決「だれでもできる住宅介護」事件判例時報(1606号118頁))

「原告が…参考文献の中から描くべきものを指示したりしたとしても、…単なるイラストないし漫画の作成の具体的依頼にすぎず、これを具体的に表現し、創作したのは、甲田であるから、その著作者は甲田であり、原告ではない。また、…原告が甲田の作成したイラストを一部修正するように注文を付け、指示をしたとしても、…漫画の作成の具体的な依頼ないし注文をした行為の一環と評価でき、イラストや漫画の著作行為であるということはできない。」

③法人の業務計画や法人と第三者との契約に従って従業員が所定の職務を遂行している場合は、具体的な指示がなくても、従業員の職務遂行上その著作物の作成が予定又は予期されていれば、法人の発意があったとした事案(知財高裁平成22年8月4日判決「共同研究報告書」事件(最高裁HP))

「法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画や法人等が第三者との間で締結した契約等に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも,業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,『法人等の発意』の要件を満たすものと解すべきである」
注:大学と市との契約に基づき行われた共同研究において、研究代表者の教員が作成した報告書について、法人著作の各要件を満たしているとした事案

④従業員の職務上の著作について具体的な指示がなくても発意があるとするとともに、公表するとすれば法人名義を付すようなものは法人等が自己の著作の名義の下に公表するものにあたるとした事案(知財高裁平成18年12月26日判決「宇宙開発事業団」事件(最高裁HP))

「『法人等の発意』の要件については,法人等が著作物の作成を企画,構想し,業務に従事する者に具体的に作成を命じる場合,あるいは,業務に従事する者が法人等の承諾を得て著作物を作成する場合には,法人等の発意があるとすることに異論はないところであるが,さらに,法人等と業務に従事する者との間に雇用関係があり,法人等の業務計画に従って,業務に従事する者が所定の職務を遂行している場合には,法人等の具体的な指示あるいは承諾がなくとも業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り, 『法人等の発意』の要件を満たすと解するのが相当である。また,『職務上作成する著作物』の要件については,業務に従事する者に直接命令されたもののほかに,業務に従事する者の職務上,プログラムを作成することが予定又は予期される行為も含まれるものと解すべきである。さらに,『法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの』の要件については,公表を予定していない著作物であっても,仮に公表するとすれば法人等の名義で公表されるべきものを含むと解するのが相当である。」